特定技能の助成金は得か|どのみちやることに当てれば得
助成金は1回きりですが、そのために増やした賃金や休暇は毎年続きます。得になるのは、助成金がなくてもやるつもりだったことに当てたときです。
得しやすいのは2つです。1つは特定技能2号を正社員にするとき、もう1つは1号の職場づくりを「軽い3つ」だけで済ませるときです。軽い3つなら出費は翻訳費などの初回だけで、毎年かかるものがありません。
2号を正社員にする場合、80万円に対して会社の出費は年10万円ほどで、8年近くかけてようやく並びます。しかも2号になると支援の委託費(1人月2〜3万円が相場)が要らなくなります。
逆に、助成金のためだけに賃金規定を上げるのは損です。3名の基本給を5%上げると、もらえるのは1回39.5万円、会社の出費は毎年約41万円で、1年で逆転します。最低賃金の改定や定期昇給でどのみち上げるなら、規定に書いて申請すれば39.5万円が戻ってくる、という使い方になります。
在留資格ごとの○×|正社員化だけが大きく分かれる
いちばん差が出るのは「正社員にしたときの助成金」です。特定技能1号は対象外、2号と技人国は対象になります。
- 特定技能1号 ── 正社員化は×。環境づくりを軽い3つで
- 特定技能2号 ── 正社員化で最大80万円。いちばん得しやすい
- 技人国 ── 契約社員から正社員にするなら対象
- 高度専門職 ── 最初から正社員なら正社員化は使えない
- もらえない・減るパターン
「外国人を雇えば72万円」は、雇っただけでは出ません
72万円は、人材確保等支援助成金の昔の上限額です。今は1つの取り組みにつき20万円・上限80万円で、どの助成金も「雇ったあとに何をしたか」に対して出ます。
特定技能1号|正社員化は対象外。環境づくりを軽い3つで
1号がいる会社でいちばん使いやすいのは、人材確保等支援助成金の「環境づくり」です。
例えば造船会社でベトナム人の1号を3名雇っているなら、この3つで60万円になり得ます。出費は就業規則とマニュアルの翻訳費だけで、毎年かかるものはありません。措置のあと6か月間、外国人の離職が基準以下(2〜10人なら1人まで)であることが条件です。
賃金を上げるなら、どちらの助成金を使うか先に決める
基本給を5%上げると、3名で19.5万円(昇給制度の新設で+20万円)が1回もらえます。ただ月給20万円なら、会社の出費は社会保険込みで1人年約13.8万円が毎年続きます。最低賃金の改定などでどのみち上げるときに使う助成金です。
特定技能2号|有期から正社員にすると、最大80万円
2号は在留期間の更新に上限がないので、正社員化コースの対象になります。
例:建設会社が、2号に上がった溶接工を正社員にする
中小企業が有期の人を正社員にすると、1人40万円。「重点支援対象者」に当たる人なら、6か月ごとに2回払われて合計80万円です。
差し引きは、月給25万円の人なら3%の増額で月7,500円、会社の社会保険を入れて年約10万円です。80万円はその8年分近くになります。ただし正社員にする以上、賞与か退職金のどちらかと、昇給の制度を日本人の正社員と同じように当てはめる必要があり、その分は別にかかります。
重点支援対象者は、次のどれかに当たる人です。
- 雇い入れてから3年以上たつ有期の人
- 雇い入れてから3年未満でも、過去5年間に正社員だった期間が1年以下で、過去1年間に正社員として働いていない人
- 派遣労働者、母子家庭の母など
受け取る条件は、正社員にする前にキャリアアップ計画を労働局へ出すこと、正社員にしたあと6か月分の賃金を払い、その賃金が転換前の6か月と比べて3%以上増えていることです。
同じ会社で5年を超えていると、20万円に下がる
ここが2号でいちばん見落とされます。
キャリアアップ助成金では、同じ会社で通算5年を超えて有期で雇われている人は「無期雇用」とみなされます。そうなると「有期→正規」ではなく「無期→正規」の扱いになり、中小企業で1人20万円です。
技能実習から1号、1号から2号と同じ会社で続けてきた人は、5年を超えていることがあります。技能実習の期間をこの5年に数えるかは、キャリアアップ助成金の資料で明記を確認できませんでした。該当しそうな人がいるなら、計画を出す前に労働局に確かめてください。
技人国|契約社員から正社員にするなら対象
技術・人文知識・国際業務(技人国)は、厚生労働省の表で正社員化コースの対象として例に挙げられています。
例:3年以上契約社員で雇ってきた通訳を正社員にする
雇い入れから3年以上の有期の人は重点支援対象者に当たるので、中小企業なら80万円(40万円×2回)になり得ます。1年ごとに契約を更新してきた人を、正社員の就業規則に移す場面です。
ただ、技人国の人は最初から正社員で採用していることが多いはずです。その場合は正社員化コースの出番はなく、使えるのは職場の環境づくりの助成金になります。外国人の相談役を決め、就業規則や社内マニュアルを本人が読める言語にする、といった取り組みです。
高度専門職|最初から正社員なら、正社員化は使えない
高度専門職は、厚生労働省の表に名前がありません。「就労目的で在留が認められる外国人」として○になると考えられますが、明記はありません。
キャリアアップ助成金のQ&Aは、就労目的の在留資格の例として技人国を挙げ、正社員化コースも対象としています。高度専門職も就労目的の在留資格なので同じ扱いだと考えられますが、確認できたのはここまでです。有期で雇っていた高度専門職の人を正社員にするなら、計画を出す前に労働局に確かめてください。
実際には、高度専門職の人は最初から正社員で雇っていることがほとんどです。その場合に使えるのは、職場の環境づくりの助成金です。英語を理解できる人なら、就業規則を英語にするのも対象になり得ます。
もらえない・減るパターン|順番と重複で落ちる
在留資格よりも、手順の順番で落ちることが多い助成金です。
| パターン | どうなるか |
|---|---|
| 最初から正社員で雇った | 正社員化コースは対象外 |
| 正社員にしてからキャリアアップ計画を出した | 対象外。計画は転換の前に出す |
| 計画を出す前に翻訳会社へ発注・支払いをした | 職場の環境づくりの助成金は対象外 |
| 同じ人の賃上げで業務改善助成金と賃金規定等改定コースを両方 | 賃金規定等改定コースの人数に数えられない |
| 同じ会社で通算5年を超えた有期の人を正社員にした | 無期→正規の扱いで額が下がる |
| 措置のあと6か月で外国人が何人も辞めた | 職場の環境づくりの助成金は不支給 |
| 特定技能1号を正社員にした | 正社員化コースは対象外 |
申請書を作って出す手続きを報酬を受けて代わりに行えるのは、社会保険労務士です。当社は登録支援機関として、受入れと支援の側からご相談を受けています。
進める順番|計画を出してから、正社員化や翻訳に手をつける
どの助成金も、取り組みを始める前に計画を出すのが先です。
- 正社員化・賃金規定の改定:キャリアアップ計画を労働局へ → 就業規則に転換や昇給の規定 → 実施 → 6か月分の賃金を払う → 2か月以内に支給申請
- 職場の環境づくり:就労環境整備計画を出して認定 → 措置を導入 → 6か月の離職率を確認 → 支給申請
- 業務改善助成金:交付申請 → 交付決定 → 賃上げと設備の導入 → 実績報告
特定技能2号への移行を控えている人がいるなら、2号の許可が下りてから正社員化する流れを今のうちに社内で決めておくと、計画を出す時期を逃しません。2号への手続きや、1号の支援の体制については外国人材雇用就労支援のページにまとめています。
補足
正社員化コースの額(令和8年度・1人あたり)
| 転換の区分 | 中小・重点支援対象者 | 中小・それ以外 | 大企業・重点 | 大企業・それ以外 |
|---|---|---|---|---|
| 有期→正規 | 80万円 | 40万円 | 60万円 | 30万円 |
| 無期→正規 | 40万円 | 20万円 | 30万円 | 15万円 |
重点支援対象者は2期に分けて支給され、それ以外は1期分です。正社員転換制度を新しく規定した場合などの加算(1事業所20万円など)は別にあります。
この記事の数字の出どころ
- 在留資格ごとの対象=キャリアアップ助成金Q&A(令和8年4月8日)Q-6の表
- 正社員化・賃金規定等改定の額と重点支援対象者=キャリアアップ助成金のご案内(令和8年4月8日)
- 通算5年を超える有期は無期とみなす=同Q&A Q-13
- 1措置20万円・上限80万円、苦情・相談体制の扱い、離職率15%=人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)令和8年度支給要領・Q&A
- 業務改善助成金で賃上げした人を賃金規定等改定コースに数えられない=業務改善助成金Q&A(令和8年9月8日更新)問47
- 職業訓練の助成金の対象外(技能実習のOJT・高度専門職の有期実習型訓練・日常会話の日本語)=人材開発支援助成金Q&A Q27・Q28
- 正社員に賞与か退職金と昇給の制度が要ること=キャリアアップ助成金Q&A Q-1
- 差し引きの月給・日給・社会保険の率(約15%)は、この記事で置いた仮の数字です
内容は2026年9月時点のものです。助成金の額と要件は年度ごとに変わるので、申請の前に厚生労働省のページと労働局で最新の内容を確認してください。